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校長コラム

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  • 2017.06.13

探究4級、コミュニケーション準2級、と評価される未来

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時は203X年。

東京オリンピックが行われた2020年の教育改革から十数年が経ち、小・中・高・大の全てにおいて講義型の授業は減り、対話型の授業やプロジェクトベースの授業が増えた。

知識習得に偏重した学習は過去のものとなり、知識と同じく、思考力や表現力といったスキル、主体性や学びへの意欲の育成が学校の中で当たり前に行われている。「アクティブ・ラーニング(主体的な深い学び)」は世の中にある程度浸透したと言えるだろう。

学期ごとの定期テストの成績は、数学、英語、物理、歴史といった従来型の科目別の評価に加え、思考力や主体性といった強化横断型のスキル・マインドの評価も行われている。「知っている」かどうかだけでなく、「考える力がある」か「心から好き」かどうかも問われる。

「数学 A評価だった!でも、思考力はCだよー」「俺なんて主体性Dだぜ。最悪・・・」「コミュ Dの俺のほうがショックだよ。あーあ、ロボットに向かって喋る練習頑張ったのにな」「それがだめなんじゃねーの」などと話す中学生たち。

さらに、大学入学を左右する新しい資格検定も、この十数年でたくさん増えた。「おまえ、今度の探究検定、何級受ける?」「準2級!」「まじかよー、すげえな。俺なんてまだ4級だぜ。」「コミュニケーション検定1級取ってるんだからいいじゃん。それであそこの商学部受かるよ!」

こんな会話がクラス内で日常的に行われている・・・・かもしれません。これは、私の頭の中でのひとつの未来シーンの妄想ですが、皆さんはどう思われたでしょうか?教育改革の進む先に、こういった未来が訪れる可能性はあります。

テスト(試験・検査)というもの

私が想像してみた上記の未来には、2つの要素があります。

ひとつは「知識偏重から総合力育成」への変化。もうひとつが「テスト文化」の継続です。テストが大事という考え方は今と変わらず、テストの中身は変わったものの、どの学校でも定期テストが行われ、全国で共通の大学入試も残っている、という仮定で考えてみました。

何もおかしなことはない、いくら時代が変わってもテスト(試験・検査)で評価するのは当たり前、と思われたでしょうか?

しかし私は、この「テスト」というものが、1つめの「総合力育成」という要素と馴染まないと考えています。なぜなら、思考力があるか、創造力があるか、コミュニケーション力があるか、意欲があるか、といったものは、そもそも力の定義が曖昧で、1つの共通基準で判断するのは難しいからです。

評価する人やシーンによって、基準が変わるほうがむしろいいかもしれません。例えば、孫正義は私の創造力を評価してくれたが、草間彌生からは全く評価されなかった、というように。2人の考える「創造力」には、共通点もあるでしょうが、おそらく異なる部分のほうが多いのではないでしょうか。

さらに大事なのが、テストは誰のためのものか?という視点です。工業製品の例を考えるとわかりやすいですが、テスト(試験・検査)というものは、品質チェックという観点が強いものです。あれは◯点だから合格、偏差値△以上だから合格、といったように。このテストによる点数評価は、知識やスキルの習得レベルを測りたい工業化時代にはよかったのだと思います。

では、探究力やコミュニケーション力、主体性といったものは、どう扱うべきなのでしょうか。何もせず、ただ放ったらかしにしておけばいいのでしょうか。

テストではなく、成長のためのフィードバックをしよう

a.school(エイスクール)では、いわゆる「お上」による「お上」のためのテストではなく、「自分」のためのテストという考え方が大事だと考えています。

自分は今どういう状態なのか、自分はどこまでできるのか、何が苦手で何が得意なのか、主観だけでは評価・判断が難しいことを、客観的に見える化するという意味でのテストです。

正直、「テスト」というよりは、「フィードバック」というのが適切でしょう。実際に、a.schoolでは「ふりかえり」と呼んでいます。

第三者からの適切なフィードバックがないと、実は大したことないのに自分は上級だと誤って思い込んだり、一人だけであれやこれやと悩み続けてしまったり、次に挑戦すべきことにうまく巡りあえなかったりするでしょう。これは、子どもだけでなく、大人も全く一緒で、「成長」するためにはまわりからのフィードバックは必須なのです(また、一流と呼ばれる人は自己フィードバックがうまい人も多いのも面白いですね)。

2020年の教育改革の議論で実は一番大事なのは、このテストという部分かもしれないと思います。「お上」によって評価軸を与えられると安心する気持ちもわかりますが、それでは本質的に「思考力」や「意欲」を伸ばすことはできないのではないいでしょうか。

他人と比較するためではなく、自己の理解と成長のために。

そんなフィードバックシステムが社会に広がればよいなと願い、日々の教育活動に邁進しています。

<おまけ>

a.school(エイスクール)の中でもまだまだ発展途上段階なので、恥ずかしい限りですが、『隗より始めよ』という格言に従い、メンター・ファシリテーターによる塾生への月次フィードバックの一部を紹介させていただきます。塾生の保護者の方からの反応もよく、今後もこのフィードバックシステムに磨きをかけていきたいと考えています。

「もっとこういうフィードバックの形を取るべきではないか?」といった、皆さまからのフィードバックを心待ちにしています!!!

▼今月の学びの様子
 今月の探究算数では、「数って何?」という2ヶ月間の大きなテーマのもと、「数や計算と仲良くなること」を目指して取り組みました。
 ◯◯さんは「大きい数」への興味が強く、初回に実施した「身のまわりに潜む大きな数(何桁もある数)を探すワーク」を毎回やりたがっていました。数や計算の細かい側面よりも、ダイナミックな側面に関心があるようです。例えば、日本語の桁の呼び方を「無量大数」まですべて紙に写すなどの行動を取っていました。
 分数や小数には苦手意識が強く、関わりたくなさそうな素振りも見せていましたが、一緒に参加するメンバーの計算を何枚もの付箋に書き写しながら、自分なりに達成感を得て取り組んでいました。

▼今月の成長・変化
 ◯◯さんの中で、「常に正解を出したい(間違えずに考え、正しい答えを導きたい)」という負けず嫌いな自分と、「知らないこと、自力で考えが進められないことがある」という現状との間で、うまく折り合いがつかず葛藤している様子がよく見られます。
 そのような中でも、「わからないから教えて。」とファシリテーターに声をかけるなど、自分から一歩を踏み出そうと努める姿勢をところどころ見せています。これからの変化に期待です。

▼今後に向けて
 「できるようになりたい」「できる自分でありたい」という気持ちや「算数は絶対的な1つの正解がある」という考えを強く持っています。そのプライドは大切にしながら、「最初はできないのが当たり前」「答えは1つじゃない」という感覚も持ち合わせられれば、うまく壁を乗り越えるきっかけになると思うので、そこを今後の強化ポイントとして取り組んでいきたいと思います。
 次月のワークショップは、「計算のコツ」を発見したり習得したりする内容がメインとなりますが、できるかぎり「パズル思考」を使って謎を解くような感覚で取り組めるよう、アプローチを工夫してみます。

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