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校長コラム

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  • 2017.02.22

脳科学と学習法② ◯◯があると記憶力がアップする!?

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人間の身体の中で「学び」の重要な機能を担っている「脳」という器官。皆さんは、「脳」を効果的に使って勉強をできていますか?昨今、脳科学は目覚ましく進歩しているものの、多くの学校の授業にはまだ届いていません。

本連載では、学習に活かせる脳科学からのヒントを紹介します。第二回は「記憶の仕組みとコツ」について。

歴史的人物、化学記号、英単語。それらがただの記号に見えて、全然頭に入ってこない。何度暗記しても覚えられない。そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか?そんなあなたに暗記のコツを教えましょう!

さて、コツを学ぶ前に、まずは皆さんにある「ワーク」を行っていただきます。5分間時間を取って、以下の文章を何度も何度も読んで暗記してみて下さい。どれだけ覚えられるか、必死で頑張ってくださいね。扱う題材は、有名な『走れメロス』の一節です。

 『走れメロス』(太宰治著)の一節

  1. メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。
  2. メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
  3. きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た。
  4. メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。
  5. この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。
  6. メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
  7. メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
  8. 歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。
  9. のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。
  10. 若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。
  11. メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。「王様は、人を殺します。」

5分が経ったら、このブログを閉じて、トイレに行ったり、コーヒーを飲んだり、散歩したり、何か別の行為を5分間行ってください。

そして、紙を取り出し、どれだけこの文章を覚えているか、頑張って書き出してください。皆さんはどれだけ書けたでしょうか?

10行書けた人、3行しか書けなかった人、色々いたと思いますが、実はここからが本題です。

2日間経って同じテストを行ったらどうなるでしょうか?但し、テストを行うことは知らせず、抜き打ちで行うという形式です。5分間頑張って文章を覚えた以外は意図的にテストのために勉強はせず、すっかり忘れていた頃に「メロスの文章を書きなさい」と言われた、というイメージです。

初回より成績は上がると思いますか?下がると思いますか?それとも、変わらないと思いますか?

1913年に心理学者Philip Boswood Ballardが実施した同様の研究で、平均的に2日後のほうが成績が上がるという驚くべき結果が現れました。何も復習せず、ただ毎日過ごしただけなのに、です。

10行書けた生徒は12行に、3行の生徒は6行になりました。

しかも、10日後には更に成績が上がり、13行と8行になりました。

これは、なぜでしょうか?何もしていないのに、記憶が勝手に “回復” し、成績が上がるということがあるのでしょうか?

1つは、前回記事でご紹介した「テスト」の効果です。テストを行うことで記憶が呼び覚まされ、より強く定着が進んだということです。記憶は使うことで上がるのです。

ただ暗記を繰り返すより、覚えているかどうかを確認するテストを混ぜたほうが記憶が定着しやすくなるので、クイズのように友達とテストを出し合ってみるとよいでしょう。

そして、もう1つが「意味」の効果です。「ストーリー」の効果と言い換えることもできるでしょう。

実は、上記の実験を、「走れメロス」のようなストーリーの暗記ではなく、意味のない単語の羅列の暗記に変えたところ、記憶の “回復” は起こらず、成績は2日後のほうが悪化したそうです。

この比較実験から、人間は「意味のあるもの」「ストーリーがあるもの」を覚えやすい、ということがわかりました。そのメカニズムはまだ解明されていないことも多いですが、意味を理解しながら暗記したものは、無意識下でも脳内で記憶の強化が進むということではないかと私は理解しています。

この気づきをあなたの勉強にどのように活かせるでしょうか?

例えば、a.schoolの英語の授業では、英単語の「語源」を探究します。import (輸入する)の語源は、in-(中に)とport(運ぶ)であり、昔は輸入されたものは大変貴重であったため、importantは「重要な」という意味になった、というような単語のストーリーです。

また、a.schoolの数学の授業では、数や図形の性質や公式の「なぜ?」を探究します。「素数とは何か?」「素数の持つ不思議な特徴とは?」「素数と暗号の繋がりって?」と素数を様々な切り口から探究することで、素数の特徴や素因数分解についての理解が深まります。

このように、「意味」や「ストーリー」をしっかりかつ楽しく学ぶことで、非常に学習効果が高まるのです。しかし、学校ではこの部分が必ずしも重要視されておらず、よくもわからず知識を覚えないといけない、という状況が頻発してしまっている現状があります。

a.schoolでは、上記のように「意味」や「ストーリー」をみんなで議論しながら楽しく探究する環境がありますが、同じことを一人で行うのは難しいなと感じた方も多いでしょう。

そんな方に、自学でオススメするのは「学習系の漫画」です。苦手分野の漫画をとにかく読み漁ってみましょう。いつの間にか知識も増え、意外と面白いなと思うようになっているかもしれません。

「これも学習マンガだ!」(日本財団主催)というサイトに100冊以上の学習漫画がまとまっているのでぜひ見てみて下さい!

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