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  • 2017.01.29

【面白数学】04-受験票のその先に

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a.school研究開発スタッフ 星功基による、【面白数学】コラム第四弾。

日常の中に潜む「面白い数学」を発見して、シンプルに紐解く連載です。a.schoolのプログラム設計でも大切にしている「数学と日常の繋がり」を皆さんも一緒に探究していきましょう!

今回は、今まさに佳境の「受験」に関する物語。誰もが一度は体感したことであるだろう、受験結果の発表の瞬間が舞台です。

自分が受験した頃を思い出すと、自分の受験番号周辺の受験生のことをよく覚えていた気がします。顔つき、服装、表情、持ち物、休み時間の過ごし方。本来目の前の試験に集中すべき環境で、なぜだかわかりませんが、教室の雰囲気から机の配置、そしてそこにいた人々のことをありありと覚えていました。

そのため、合格発表掲示板を見るときには、自分の合否だけでなく、まわりの受験生の結果がとても気になり、一緒に確認していました。「なんとなくあの子は受かっていてほしかったな」「そっか、これから数年間あいつと一緒に通うんだ」「まわりに合格者が多くてよかった」。そんなことを思いながら。

日常の中でのシンプルな「数の対応」の裏に、感動や悲しみが詰まった「ストーリー」があるんだなぁとしみじみと再認識した記事でした。

(a.school代表 岩田拓真)

受験シーズン。

この季節になるといつも思い出す、ある数学的な出来事がある。

自分はいつも中学生向けの教材を編集している。その教材で学んでくれている中学生たちの大きなゴールが、受験、そして合格だ。

合格発表のときには、部署をあげて「合格取材」を行う。

合格発表の日。全国にあるいくつかの高校の門の前で待ち、合格したての会員の中学生たちに、今の気持ちや、お届けしてきた教材への感想、後輩たちへのメッセージなどを取材するのだ。

もう7、8年前だろうか。

3月のはじめ、ある高校の前で合格取材をしていたときのこと。

寒さでピリついた空気の朝。厳かに構える校門から、学校にご挨拶を済ませた取材リーダーが戻ってくると、時を同じくして、合格発表を見に来た中学生たちが次々と校門の中に入っていく。

1人で見に来た子。お母さんやお父さんと見に来た子。みな少し早足で、緊張しているように見えた。

その子たちに、さりげなく腕章と合格取材のプラカードを見せる。具体的に誰が会員さんかはわからないが、事前に「合格取材」をする旨をお手紙で送っているので、伝わる子にはそれだけで十分に伝わる。

発表前のナイーブな時間に、大きな声を出すわけにもいかない。どうか合格していますようにと念を送って見送った。

他の塾のスタッフの皆さんも見送っていた。おそらく同じ念を送りながら。

合格発表は、校門の中の方で行われる。事前にたてつけられた板に発表の紙が貼られる形式だ。

午前8時50分。約束の9時が近づいてきた。

校門の向こうを見ることはできないが、声や音はかすかに伝わってくる。

ざわついてきた。

おそらく職員の方が校舎から、運命の紙を持って出てきたのだろう。想像力を駆使して、向こう側の状況を伺っていた。

受験票を左手で強く持つ女の子。

貼られる発表の紙。

その時。ある数学的なイメージが浮かんだ。

何もこんなときにと思うが、普段教材を編集している性なのか、どうしようもなかった。

女の子が持っている「135」の受験票。

これと同じ「135」が合格発表の紙にあれば「合格」ということになる。なければ「不合格」だ。

もはや当たり前のようにも思えるこのシステムも、数の持つ性質や数学的な概念に支えられている。

数には1→2→3という順序や15個などの個数を表すことなどとともに、何かを整理し対応させることができるという「よさ」がある。

● 1つの数に1人の受験者を対応させること。

「番号」をふることで、受験者を後で特定できるようにするのだ。

マイナンバーなどのIDや統計などの世界も、この数の持つ便利さに支えられている。

もう1つ。

● 合格者を表す数を、受験票の数と対応させること。

この対応が「合格」ということを表す。

この2つの対応によって、彼女は合格する。

頭の中の図を眺めながら、合格の対応をしていない「134」や「168」に心を向けていた。

校門の向こう側のボリュームが上がった。ああ、今この瞬間に、あの気持ちが起こっている。

受験票のその先に。自分の数を見つけた人。見つけられない人。

声にならない歓喜の声と何度も確認して息を飲む喉。

132、133、135!135!

166、167、169。167、169。169。

1人ひとりのその瞬間に思いが巡り、苦しくなった。

発表の歓喜が落ち着いてくると、静かな興奮の空気になった。みな思い思いの声を掛け合っている。そこには涙もあるだろう。

合格取材をするという立場になり、数学的なイメージを広げて現場を想像したとき、今までにない独特な感慨が、心を支配していた。

こんなにも「数の対応」が一大事になるシーンが、人生の中で他にどれだけあるだろうか。

自分が受験者だったときには見えていなかった景色。そこには、対応したたくさんの数と、対応しなかったたくさんの数があった。ともすると味気ない数の世界が、運命を左右していた。

「数の対応」をイメージしたことで、校門の向こう側がありありと見えた。

少し足取りが重い子たちが一人、また一人と校門を出てきた。残念ながら不合格だった子たちだ。合格だった場合は、入学書類をもらっているため、時間差で出てくる。そこにあってほしかった書類がないコートの脇が目に入り、より一層、苦しくなった。

しばらくすると、次の一団が出てきた。

入学書類を抱えた女の子が走ってきた。

なんて晴れやかな表情だろうか。

「おめでとう!」と迎え入れ、そのまま興奮気味の取材が始まった。

つられて喜びが溢れた。

もはや数の対応のことなど、どうでもよくなっていた。

〈執筆〉星功基
a.school研究開発スタッフとして、算数や探究ラボの授業設計サポートをしている。また、文字とことばのデザインユニット「二歩」としても活動中。大学時代に所属していた佐藤雅彦研究室で学んだ「考え方を考える」ことを大切に、夢中になる教育と表現をつくりたいと思っている。
元記事はこちら

 

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